Research Contents
研究内容
Lithium/Sodium ion batteries
新規固体二次電池に関する研究
リチウムイオン電池とセラミックス材料は切っても切れない関係にあります。現在主に使用されている正極材料はコバルト酸リチウム(LiCoO2)という材料がベースになっており、リチウムとコバルト(ほかニッケルやマンガン、アルミニウムなどの遷移金属も含有)の金属酸化物です。電池材料に求められる特性は多々ありますが、その中でも容量、電圧、重量、耐久性、加工性、安全性などが重要となります。それらの指針より、当研究室では以下の点に着目して研究を行っています。
「超高速充放電能力」:我々の生活は多くの電子デバイスによって構成されているため、二次電池は欠かせない心臓部分です。“充電(残量)がない!”なんて経験をされた方が多いのではないでしょうか。我々は材料から見つめなおし、充電時間を根本的に加速する研究を行っております。最近の研究では36秒で50%、72秒で70%充電できる材料開発に成功しました。また放電速度も非常に重要で、大きなエネルギーを瞬時に必要とするデバイスをサポートするには強靱な“心臓”が必要になります。言い換えると瞬間放電能力が必要となります。このような観点よりリチウム二次電池の超高速充放電性能は様々な生活様式を豊かにしてくれる可能性を秘めています。材料や界面に着目することで、電池性能の劣化機構の学理を追求することで特性の向上のキーポイントを探求しています。
「安全性・環境適応性」:ボーイング787の燃焼事故等で話題になりましたが、液系リチウムイオン電池の安全性はまだまだ問題があります。リチウムイオン電池は大きく分けて正極/電解質/負極の3層にて構成されますが、電解質には液系ポリマーが使用されております。正極はセラミックス、負極はカーボンや金属なので、燃焼する可能性があるのはこの液系ポリマー電解質です。この部分を固体化することで燃焼物を取り除き、安全に使用できる全固体リチウムイオン二次電池が活発に開発されております。現在最も有力とされている新材料は硫化物セラミックスであり、LPSやLGPSと呼ばれる材料群です。この材料群は液系電解質に匹敵するイオン伝導を示すことから、代替材料として着目を浴びています。この材料群にも一つだけ大きな欠点があり、それは水分(大気)に弱いということです。硫化物は水と反応して人体に有害な硫化水素を発生します。完全な安全性を求めるには大気で安定な材料を適用する必要があります。我々のグループでは今までにない全く新しい固体酸化物系電解質の開発をしております。安定な材料で構成されているので大気で扱うことが可能で、グローブボックスやドライルームは必要ありません。有機溶媒も使わず水でハンドリングできるので、環境にも人体にも優しく、また投資コストやランニングコストも低くエネルギー消費を押さえられるために、カーボンニュートラルの観点でも優れています。継続的な開発を進め、いつの日かこの材料が電池として使われる日を夢見て新しい電池の特性向上に切磋琢磨しています。
Ferroelectrics, Piezoelectrics and Multiferroics
強誘電体、圧電体、誘電体、マルチフェロイック(強的秩序)材料に関する研究
強誘電体は自発的に電荷を蓄積し、外場(電圧など)によってその電荷が反転する材料です。結晶学的な言葉で言い換えると、極性でありその分極方向が外場によって変調可能な材料のことです。この材料は多くの機能性を示すことから電子デバイスに広く使用されております。この材料の開発および操作は、デバイスの高機能化、高性能化を導くと信じ研究を行っています。これらの材料は高品質薄膜を作製することで探索を行っています。
「強誘電体」:Pb(Zr,Ti)O3やBaTiO3をはじめとする強誘電体はメモリやコンデンサの主材料として使用されています。これらの性能は自発分極、誘電率、抗電界、絶縁性などに依存し、デバイス性能に適当な物性をチューニングする必要があります。現在、多くの鉛系材料が使用されているのでその材料の非鉛化(無鉛化)は環境への配慮より重要な課題となります。我々の研究室では今までにない強誘電体材料の開発を進めています。
「圧電体」:圧電性は名前の通り、電気的性能(電荷)と機械的性能(変位)の変換を可能とするエナジーコンバータ材料です。電圧によって変位を制御したり、歪によって電荷を制御可能です。圧電性能は4つ(d,e,f,g定数)によって示されますが、センサやトランスデューサなど用途によって使い分けられています。キーポイントとなる物性は誘電率、d定数値、d定数線形性などです。強誘電体しかり、鉛系材料からの脱却が課題となっています。我々の研究室では今までにない圧電体材料の開発を進めています。
「誘電体」上記特性は大きな枠から見たら誘電体のカテゴリーで表現することが出来ます。誘電体といえばコンデンサですが、電子デバイスを動かす動力として絶対的に必要になります。根本的に新しい材料を見いだすために、これまでの材料設計とは異なる視点で材料探索を行っています。
「マルチフェロイック材料」:マルチフェロイックとは名前の通り、マルチ(2種以上)なフェロイック(強的な秩序、オーダリング)特性を有する材料のことです。主に強誘電性-強磁性-強弾性を示すことが多く、その秩序に関する特性を異なる種の外場(電場-磁場-歪)によって制御することが可能です。マルチフェロイック材料には単材料型と積層材料型が存在し、前者は一つの材料がマルチフェロイック特性を有ており制御することが可能、後者は別々のフェロイック特性について接合界面を通じて制御することが可能な材料のことです。前者の材料において、室温以上でマルチフェロイック特性を示す材料は非常にレアで、BiFeO3は唯一無二材料として研究されています。我々はk-Al2O3型(e-Fe2O3型およびGaFeO3型、同構造)構造に着目して新規材料探索を行っています。